作成日:2024/01/31
更新日:2024/10/23
慢性的な人手不足に陥っている介護業界に対して、3年間の経過措置期間を経て生産性向上委員会の設置義務が明示されています。
介護は国民の健康的な生活を支えるインフラ事業といっても差し支えありません。大事な介護事業の健全運営を支えるために厚労省が動きました。
本記事では生産性向上委員会について説明するとともに、介護業界の生産性向上について詳しく説明しています。
生産性向上委員会及び、介護業界の生産性向上について関心がある人は、ぜひ記事内容をご確認ください。
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厚労省が生産性向上委員会の設置を義務づけ
生産性向上委員会とは、「介護現場における生産性向上を推進するために、特別養護老人ホーム、認知症グループホーム、特定施設などの事業所に設置が義務付けられた委員会」です。
2024年度の介護報酬改定で導入されることとなっており、2027年度から本格的に実施されます。
委員会の構成は、管理者、介護職員、看護職員、その他の多職種の職員で構成されます。
また、必要に応じて、利用者や家族、地域住民も委員に加わることも可能です。
委員会の主な役割は、以下のとおりです。
・介護現場における生産性向上に関する課題の把握
・課題の解決に向けた対策の検討
・対策の実施と効果検証
委員会は定期的に開催し、介護現場における生産性向上に向けた議論を行います。
具体的には、以下の内容について検討します。
・介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る
・介護ロボットやICT等のテクノロジー導入後の継続的な活用支援
・利用者の安全並びに介護サービスの質の確保
・職員の負担軽減・情報通信技術(ICT)の活用
今回の改定では、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続するとともに、一定期間ごとに、業務改善による効果を示すデータを提供する施設に対して「生産性向上推進体制加算」が設けられることになりました。
新たに導入される「生産性向上推進体制加算(Ⅰ)」と「生産性向上推進体制加算(Ⅱ)」にはそれぞれ以下のような条件があります。
加算名 | 条件 |
---|---|
生産性向上推進体制加算(Ⅰ) | 100単位/月(新設) ・(Ⅱ)の要件を満たし、業務改善の成果がデータにより確認されていること。 ・複数の見守り機器などのテクノロジーを導入していること。 ・職員間で介護助手のような適切な役割分担を行っていること。 ・毎年1回、オンラインで業務改善の成果を示すデータを提出すること。 |
生産性向上推進体制加算(Ⅱ) | 10単位/月(新設) ・利用者の安全や介護サービスの質向上、職員の負担軽減のための委員会を開催し、安全対策を講じた上で生産性向上ガイドラインに基づく改善活動を継続的に行っていること。 ・見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入していること。 ・毎年1回、オンラインで業務改善の成果を示すデータを提出すること。 |
※参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について
既に生産性向上の取り組みを進めている施設について、Ⅱの条件を満たす同等以上のデータを示した場合Ⅰの加算を取得せず、Ⅱの加算を取得することも可能です。
委員会の設置により、介護現場における生産性向上に向けた取り組みが一層推進されることが期待されるでしょう。
介護現場で求められる具体的な施策と生産性向上の背景
介護分野の生産性向上について、求められる背景や取り組むべき施策について、詳細を説明します。
背景
介護の分野では生産性の向上が喫緊の課題です。円滑な介護サービスを提供するために、早く課題を解決しなければいけません。
介護業界に生産性が求められる背景は以下の通りです。
・少子高齢化による介護需要の増加
・介護職員の不足
・介護サービスの質の維持・向上
日本は現在、少子高齢化社会の真っ只中にあり、2025年には高齢化率29.6%にも達すると言われています。
来るべき介護需要の増加に備えて十分な用意が必要ですが、現実には介護職員の不足によって、現場は日々困窮しています。
多くの介護現場では、忙しさと人手不足による悪循環に陥っており、介護サービスの質を維持し、向上するのが難しい現状です。
少ない人手で最大限の成果を出すための生産性向上は、これからの介護現場には欠かせません。
必要とされる3大施策
少ない人手でも現場がまわる組織作り
最小限の人手で現場をうまく回すには、役割分担の明確化など組織作りが大切です。
介護の現場には、テーブル拭きや加湿器の給水など、業務表には記載されないような、細かい業務がたくさんあります。
今までスポットがあたらなかった細かい業務を洗い出し、適切に分担すると生産性向上の基盤となりえます。
それぞれのスタッフがいつどこでどんな業務にあたっているのか、10分単位で細かく調査し結果を分析すると、必要な業務とそうでない業務の棲み分けができ、正しい役割分担ができるようになるでしょう。
ロボットやセンサー、ICTの活用
製造や物流業界と同様に、介護業界でもロボットやセンサー、ICTの活用が求められるようになりました。
介護現場では主に次のような機器やICTが必要とされます。
・見守り機器
・インカムなど職員間で連携をとれる機器
・介護記録作成の効率化にあたるソフトウェア
人間が携わる業務をサポートしてくれるロボットと、介護記録を電子化する記録システム、利用者と介護職員、利用者と家族など、コミュニケーションを円滑にするシステムも今後必要になってくるでしょう。
また、先ほどご説明した生産性向上委員会において、見守り機器・ICT機器を導入し条件を満たしたとき新たな加算を設けることを発表しました。
生産性向上に対する取り組みを進める施設においては人員配置基準の特例も明示されています。
【生産性向上に先進的に取り組む特定施設における 人員配置基準の特例的な柔軟化】
基準:
特定施設ごとに置くべき看護職員及び介護職員の合計数について、要件を満たす場合は、「常勤換算方法で、要介護者である利用者の数が3(要支援者の場合は10)又はその端数を増すごとに0.9以上であること」とする。
<現行> | 利用者:3(要支援の場合は10) ⇒介護職員(+看護職員):1 |
---|---|
<改定後(特例的な基準の新設)> | 利用者:3(要支援の場合は10) ⇒介護職員(+看護職員):0.9 |
要件:【生産性向上推進体制加算(Ⅰ)】を満たしている施設
※参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について
なお、上記特例の申請に当たっては、取組等の開始後に少なくとも3か月以上試行することや、現場職員の意見が適切に反映できるよう、委員会での安全対策立案や介護サービスの質の確保・職員の負担軽減が行われていることをデータ等で確認し、提出する必要があります。
今後は見守り機器や連携機器・ソフトウェアの活用を通して、生産性を向上させデータで見える化をしていく取り組みが進んでいくことが予想されます。
介護ロボットの導入にはもう少し時間がかかるかもしれませんが、記録システムやコミュニケーションシステムは現段階でも導入可能ですので、今のうちに一度検討してみるのもいいでしょう。
介護業界のイメージ改善と人材の確保
介護の仕事に良いイメージを持っている方ばかりとは限りません。
人手不足解消を目的として、厚労省でも介護の仕事のイメージアップ施策を模索しているほどです。
実際のところ、介護の仕事は取り組んでみるとやりがいを感じることが多い仕事です。また、経験を積み重ねることでスキルアップがしやすい点も魅力の一つです。
離職率が高い原因には仕事内容だけでなく、人手不足を起因とする人間関係の悪化も多く見られます。
介護業界のイメージアップには、魅力を知ってもらうための体験を提供する必要があります。
■特許取得の離床予測を活用!テクノロジーで介護を変える見守りシステム
介護業界の生産性向上に向けた具体的な取り組み
介護業界の生産性向上について、求められる具体的な取り組みについて説明します。
・5S活動の取り組み
・業務の洗い出しと明確な役割分担を決める
・記録と報告のスタイルを再検討する
・シームレスな情報共有
・OJTのマニュアル化
5S活動の取り組み
5Sは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つの活動からなる、生産性向上や業務改善のための手法です。
介護業界においても、5Sの取り組みは、業務の効率化や質の向上に効果を発揮しています。
5Sの詳細を一覧にまとめました。
整理
必要なものと不要なものを分類
不要なものを排除する
対象:
・備品や設備
・書類や記録
・業務手順
整頓
必要なものを定位置に置き、取り出しやすいようにする
対象:
・備品や設備
・書類や記録
・業務手順
清掃
汚れや不衛生なものをなくす
対象:
・備品や設備
・書類や記録
・業務手順
清潔
清掃を習慣化すること
清掃した状態を維持すること
対象:
・利用者の居室や共有スペース
・備品や設備
・食器や調理器具
しつけ
整理・整頓・清掃・清潔を習慣化すること
それを継続的に行うこと
対象:
・職員の行動
・利用者の行動
5Sとは、トヨタ自動車の製造現場で徹底されている取り組みで、その内容にはトヨタの理念や行動指針が反映されています。
自分たちの現場で5Sを行うには、現場の把握や課題の洗い出し、目標の計画と立案を別途行い、理念や行動指針を反映させなければいけません。
理念や行動指針が反映された5Sの取り組みを目指しましょう。
記録と報告のスタイルを再検討する
記録と報告のためのムダな動きがないか、再検討しましょう。
毎日の流れの一つとして行う介護記録の作成や報告業務は、多少効率が悪くてもいつの間にかそれが当たり前となってしまい、効率が悪いまま定着してしまいがちです。
業務の流れを洗い出してみると「項目が複数の帳票に重複している」「記録のために都度パソコンまで移動している」など、細かなムダを発見できる可能性もあります。
上記の課題は、タブレット端末やスマホからのリアルタイム入力、重複する項目は自動で転記されるようにするなどICTの活用によって解決できます。
また、現在では音声入力による端末への記録技術も見られます。
インカムが受け取った音声を記録システムへ自動入力するなど、音声入力を有効活用している事業所の効率が高いという声もあります。
シームレスな情報共有
現場スタッフ間の情報共有は介護の現場において、とても重要です。施設が複数階に別れている現場では、意思疎通にひと工夫しなければ効率の良い運営はできません。
リアルタイムな情報共有の手段はいくつかありますが、その一つにインカムの利用があります。インカムがあれば意思伝達のために当事者を探して走り回ることはなくなります。
最近のインカムには、スマホとBluetoothでつながっている物も多くなっており、インターネット経由でどこにいても話ができるものも少なくありません。
リアルタイムで情報が共有されるため、申し送りにかかる時間を削減できる点もメリットです。
※弊社サービスとインカムの活用事例はこちら
https://lashic-care.jp/press/bonx
OJTのマニュアル化
OJTとは現場での実地研修のことです。教える内容が人によって違うと、教えてもらう側も混乱してしまい、一人前の人材に育つために時間がかかってしまいます。
教える内容や順序、評価の基準などをマニュアル化しておけば誰が教えても同じようにOJTを進めることができます。
人材を迅速に現場へ投入するには、介護スタッフの年齢層が年々増加しており、誰もが見てすぐに使えるようになるような作り込まれたOJTのマニュアルが必要です。
介護現場の生産性向上に役立つツール
他の業界と同様に介護業界でもDX化推進が推奨されるようになりましたが、中でも特に注目を集めているのはICTツールです。
ICTツールとは、情報通信技術を活用して仕事や日常生活をサポートするシステムやアプリケーション、デバイスのことをいいます。介護ロボットに比べると、ICTツール導入のハードルは低いです。
介護の現場で活躍が期待できるICTツールは以下のとおりです。
・チャットツール
・記録作業のクラウド化
・勤務シフト自動作成化ツール
・コミュニケーションアプリ
意思の伝達と共有において、ICTツールは大いに活躍してくれるでしょう。ただし、ICTツールは便利な反面、運用においてルールをしっかり守らなければうまく機能しません。
導入にあたっては、先に運用ルールをしっかり決めておくことが大切です。
生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくりという点においては、介護ロボットや ICT 等のテクノロジーの活用促進も求められます。
つまり、職員の負担がいかに少なく合理化されたものになっているのかも大きく問われると考えられます。
まとめ
介護業界を取り巻く人手不足問題は、少子化の社会背景と相まって深刻さを増しています。すぐに解決の見込みがない人手不足問題を補うには、生産性の向上しかありません。
仕事の運営方法や必要に応じたICTツールの導入によって、ある程度の生産性向上は見込めるでしょう。
弊社では介護施設の運営を行うグループ企業として、見守りシステムの最適な導入方法について現場を熟知した営業担当者がおります。今後の介護報酬改定によって、見守りシステム等の最新技術を導入する施設さまも増え、介護現場の業務効率化に大いに貢献することでしょう。
また、生産性向上についてのお困りごと、DXによってスタッフの業務負担の軽減にも役立つため、職場環境が改善されより職員の皆様が快適に働ける環境が作れるでしょう。
初めてのシステム導入を検討する際には不安がついて回るものです。まずはどんな見守りシステムがあるのか、知るところから始めてみませんか。
弊社スタッフが、今できることからサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。