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訪問介護の人員基準とは?職員の種類や常勤換算の計算方法についてお役立ち情報を解説

作成日:2024/06/25

更新日:2024/10/23

訪問介護とは、ご自身やそのご家族のみで日常生活を送ることが難しくなった要介護者に対して、介護福祉士やホームヘルパーなどの訪問介護員がご自宅を訪問し、日常生活のサポートや家事代行、外出時の付き添いなどを行う介護サービスのことです。

訪問介護は訪問介護事業所(ヘルパーステーション)から訪問介護員を各利用者に対して派遣しますが、運営するにあたって人員基準が定められています。

本記事では訪問介護の人員基準に必要な職種や計算方法、違反した際の罰則などについて解説します。



訪問介護の人員基準は?

始めに、訪問介護事業所の人員基準について詳しく解説します。

訪問介護員

訪問介護員とは、在宅で生活している要介護者に対して食事・入浴・排泄などのケアを行う身体介護や調理・買い物・掃除などを代行する生活援助などのサービス提供を行うスタッフのことを指します。

訪問介護員の人員配置基準は常勤換算で2.5人以上と定められています。常勤換算とは、その施設で働くスタッフの平均を計算する方法です。

少し計算方法が特殊なため、後ほど解説します。

厚生労働省が定めている人員基準で、訪問介護員は

・介護福祉士

・実務者研修修了者

・介護職員初任者研修修了者

・生活援助従事者研修修了者(生活援助中心型のみ提供可能)

・居宅介護または重度訪問介護を提供しているもの

・旧介護職員基礎研修修了者

・旧訪問介護員1級もしくは2級課程修了者(旧ホームヘルパー養成研修1級または2級修了者)

・看護師、准看護師、健師

のいずれかの資格を有している必要があります。


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サービス責任者

サービス責任者とは、居宅介護支援事業者等との連携やケアマネージャーが作成したケアプランに基づいた訪問介護計画書を作成し、適切な介護を行えるように訪問介護員に対して指示を出すスタッフのことを指します。

略して「サ責」と呼ばれることもあります。

サービス責任者は、時には自身もホームヘルパーとして働くことや、経験が浅い訪問介護員に対して指導を行うこともあります。

そのため、介護に対する知識や技術を持っており、コミュニケーション能力が問われる訪問介護事業所の中心を担う役職になります。

サービス責任者の人員配置基準は、利用者40人あたり1人以上と定められています。また、40人を超える場合、次の基準を全て満たすことで、利用者50人あたり1人以上の配置が認められます。

  1. 常勤のサービス提供責任者を3人以上配置していること、
  2. サービス提供責任者の業務を主として従事するものを1人以上配置していること、
  3. サービス提供責任者の業務が効率的に行われている

以上の3つの条件になります。


この条件の中のサービス提供責任者の業務を主として従事するものとは、その事業所のサービス提供責任者がホームヘルパーとして行ったサービス提供時間が1月あたり30時間未満のものと定められています。

また、サービス提供責任者の業務が効率的に行われていることとは、サービス提供責任者が行う仕事について、省力化や効率化を進め、サービス利用者の情報などを職員間で円滑に共有できるようにソフトウェアやネットワークシステム等が活用されており、業務の効率化が捗るようにするものと決められています。

サービス責任者は介護福祉士・実務研修修了者・旧介護職員基礎研修修了者・旧訪問介護員1級課程修了者のいずれかの資格を有していることが条件になります。


常勤管理者

常勤管理者とはその名の通り、訪問介護事業所の責任者になります。業務内容は、訪問介護の品質の管理(訪問介護員の教育を含む)、人材管理、事業所の経営です。

人員基準では、常勤管理者を1人配置することを義務付けています。しかし、管理者としての業務に支障がない場合は同じ敷地内や道路を挟んだ向かいにある施設で他の職務を兼務しても良いことになっています。

例えば、常勤管理者とケアマネ、常勤管理者とサービス責任者などです。常勤管理者に関しては、他の2職種と違い、特に必要な資格は定められていません。


訪問介護の常勤換算の計算方法 

常勤換算とは、厚生労働省によって定められたスタッフの平均を計算する方法です。

常勤換算=常勤スタッフの人数+(非常勤スタッフの延勤務時間数/常勤スタッフの勤務するべき時間)で計算することができます。

常勤換算で使用する勤務時間は基本的には月ごとの勤務時間を使用して計算を行います。

また、常勤換算を行う際に、常勤職員が介護や育児を理由に時短勤務を行っている場合、30時間以上の勤務で常勤と扱っても良いとの決まりも定められています。

そのため、時短勤務で1日6時間×5日の勤務で常勤「1」とカウントすることが可能です。下記で常勤換算の計算例を提示します。


常勤換算の計算例

では、常勤換算の計算例を紹介します。訪問介護では、就業規則によって週あたり就業時間が32時間と40時間の事業所がありますが、ここでは常勤の就業時間が40時間の事業所を例にして計算を行います。対象となる職員は介護訪問員とします。


例1)常勤時間が40時間の常勤スタッフが2人、非常勤で勤務時間が20時間のスタッフが1人いる場合の計算式

 

常勤スタッフの数 2人+(非常勤の延べ勤務時間数 20時間/常勤の勤務するべき時間 40時間)=2.5人(少数第2位以下は切り捨て)

となり、訪問介護員の人員基準2.5人を満たしています。


例2)常勤時間が40時間の常勤スタッフが1人、非常勤で勤務時間が20時間のスタッフが2人いる場合の計算式


常勤スタッフの数 1人+(非常勤の延べ勤務時間数 40時間/常勤の勤務するべき時間 40時間)=2人

となり、訪問介護員の人員基準2.5人を満たすことができていないため、勤務時間が20時間以上の非常勤の訪問介護員を増やすか、常勤の訪問介護員を増員する必要があります。


その他、一週間単位で働く時間が異なる登録ヘルパーについても同様に、週当たりの実際に稼働するであろう時間、または勤務表に書かれた時間数をベースに計算します。


人員配置基準や報酬算定では常勤の配置に基準がありますので、計算方法について覚えておきましょう。


訪問介護の人員基準に違反した場合

 ここまで、訪問介護の人員基準と常勤換算について解説しました。ここから人員基準の違反について解説します。


違反の事例

ここではどういう状況で人員基準が違反になってしまうか例を示します。

例1)元々、訪問介護員が常勤で3人いたが退職で1人減ってしまった場合

訪問介護事業所で訪問介護員が3人で業務を行っていた場合に1人退職者がでてしまうと訪問介護員は2人になってしまいます。

厚生労働省によって定められている訪問介護の人員基準は常勤換算で2.5人以上のため、上記の状況では人員基準を満たすことができていません。

そのため、人員基準を満たすためには新しく非常勤で常勤時間の半分を満たすように新しく人員を採用するか、常勤で1人以上採用する必要があります。


例2)訪問介護の立ち上げを行う際に人員が足りない場合

新しく訪問介護の事業所を開業する際は人員基準を満たすように事業所を立ち上げる必要があります。

その際に、訪問介護員の人員基準2.5人以上を満たす必要があります。訪問介護員は資格基準があり、採用したくてもなかなか採用ができない場合があります。

このような状況では新しい訪問介護の事業所の立ち上げはできません。また、虚偽の申請を行った場合、後から行政処分などの重い処分を受けてしまうことがあるため、虚偽の報告は行わないようにしましょう。




違反があった場合の措置

もし、訪問介護の人員基準を違反してしまった場合はすぐに都道府県に届け出を行い、サービスの提供を続けても良いか、ペナルティ(以下で説明する人員基準欠如減算のことです)やどの程度の期間内に再度人員基準をクリアし直さなければならないかを確認します。

その後、人員基準の改善ができた場合は報告、できなかった場合は再度相談する必要があります。

実際に上述の例のように人員基準を違反した場合、行政処分などの措置を取られてしまうことがあります。

具体的な行政処分の内容としては、「人員基準欠如減算」と呼ばれる減算があります。この人員基準欠如減算は、当該施設における利用者の介護報酬の基本報酬を30%カットする決まりです。

訪問介護の収入は主に介護報酬のため、この処分はかなり重い処分となります。また、人員基準より従業員数が下回ってしまった際に虚偽の報告を行った場合、新規の利用者の受け入れ停止や介護請求の一部停止などの追加の行政処分を受けることがあります。

さらに、悪質な場合は介護事業所の指定取り消しをされてしまうことがあります。この介護事業所の指定取り消しは非常に重い行政処分となります。

人員基準違反は非常に重い行政処分を受ける可能性があることを認識しておく必要があります。

訪問介護における人員基準は訪問介護員の資格の基準があり、この資格の基準をクリアできているかをしっかり確認した上で人員基準の対策を行う必要があります。


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訪問介護の人員基準に違反しないための注意点 

人員基準の違反は上述の通り、非常に重い処分を受けてしまう可能性があります。ここでは、人員基準に違反しないための注意点について概要を解説します。

採用した職員の資格を正確に確認する

訪問介護における人員基準の違反は、訪問介護員の資格要件を満たすことができていなかったケースと人員自体が足りていなかったケースが多いとされています。

そのため、採用した職員の資格を正確に確認することが非常に重要になります。

介護分野における研修は非常に種類が多く、研修名も似ているものが多いため、設立の際に新規の職員を採用する際は、今までに受講した研修やその他資格の正確な名称を確認できる書類などを提示してもらうようにしましょう。

また、有資格者の新規での採用は無資格者の採用と比較し、少しハードルが上がります。そのため、設備の充実や業務効率化など職場環境を整え処遇をよくすることで、離職者を減らすことも人員基準を違反しないための方法として非常に重要な方法になります。

ICTの導入による効率化と環境作り

訪問介護における人員基準対策として、業務を効率化することで必要以上の職員への負担を軽減することで離職者を減らすことも重要になります。

近年話題になっている、ICTの導入は業務の効率化を図ることができます。

訪問介護事業では利用者様の記録や、介護報酬の請求、ケアプランの作成、訪問スケジュールの管理など様々な業務をICTで効率化することができます。


また、2024年度の介護報酬改定では、「介護ロボットやICT等の継続的なテクノロジー活用を支援するため、見守り支援機器等のテクノロジーを導入し、生産向上ガイドラインに基づいた業務改善を継続的に行うとともに、効果に関するデータ提出を行うことを評価する新たな加算を設ける」とされています。

訪問介護分野では介護ロボットの導入はまだあまり進んでいませんが、ICTを利用した業務体制を整備することで介護報酬を得ることができるようになりました。

今後の介護報酬でもICT分野における報酬は追加される可能性もあり、業務の効率化だけでなく、介護報酬を得るなどのメリットも大きいため、ぜひ導入を検討しましょう。


人材の採用を強化する

人員基準を満たすために人材の採用を強化することが重要なポイントになります。人材の採用を強化するためには、さまざまな工夫が必要になります。人材の採用にはターゲットを絞った上で求人を出すことが重要です。

例えば、子育てや介護などを行いながら復職をしたいと考えている元介護職の方を採用したいのであれば、「勤務調整が行いやすい」、「有給が希望した日に取りやすい」などの点をアピールする必要があります。

また、訪問介護事業所がどのような社風なのかを発信するために事業所のホームページを作成することも重要です。

さらに、事業所内の雰囲気を発信する目的でSNSを使用することも検討してください。求人をしている訪問介護事業所の社風や雰囲気の情報が分かりやすく発信されていると、求人を見た就職希望者は応募しやすくなります。

そのため、求人を出す場合は人材のターゲットを絞った上で、そのターゲット層はどのような職場環境であれば勤務が行いやすいかを考えることで応募しやすい環境を整えることができます。


まとめ

本記事では訪問介護の人員基準について、必要な職種、計算方法、人員基準を違反してしまった際の罰則、人員基準を違反しないための方法について解説を行いました。

訪問介護などの介護事業では人員基準は施設を運営する上で必ず守らないといけない基準です。

違反した場合はペナルティもあるため、基準を下回らないように注意が必要です。この記事が皆様の訪問介護事業にお役に立てば幸いです。



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