作成日:2024/04/09
更新日:2024/10/23
最近、高齢者の新たな住まいとして「サ高住」が話題になっているのをご存知ですか?
サ高住は、サービス付き高齢者向け住宅の略称で、地域包括ケアシステムの施策の1つとして2011年に誕生しました。
本記事では、話題になっている「サービス付き高齢者向け住宅」の人員基準を解説いたします。
設置基準や他施設との違いも併せて紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
■特許取得の離床予測を活用!テクノロジーで介護を変える見守りシステム
サービス付き高齢者向け住宅とは?
厚生労働省によると、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住とも呼ばれる)とは「高齢者単身・夫婦世帯が居住できる賃貸等の住まい」のことであると説明しています。
「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正により、2011年10月に誕生しました。
行政は、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を送り続けられるよう「地域包括ケアシステム」を構築しています。
サ高住は、このシステムの一環として登録をスタートしました。そのため、長期的な療養ではなくご自宅と同じように本人らしくのびのびと暮らしていただくことを中心に作られた賃貸住宅と言えます。
サービス付き高齢者向け住宅の人員基準と職種を紹介
ここからは、サービス付き高齢者向け住宅の人員基準と職種について詳しく紹介していきます。
サ高住には、一般型と介護型の2種類があることをご存知でしょうか?
これらは、それぞれ人員基準が異なりますので、1つずつ見ていきましょう。
一般型サ高住の場合
サ高住の約90%は、一般型となります。
一般型サ高住には、自立~軽介護度の高齢者が居住しており、介護施設で提供される食事・入浴・排泄などの身体介助や掃除・清掃・洗濯などの生活支援、リハビリなどの介護サービスには介護保険が適用されません。外部の在宅介護サービス(訪問介護)や通所介護を利用する際は、希望するご入居者様が個別に契約し全額負担することになります。
そんな一般型サ高住の人員基準は、「社会福祉法人、医療法人、指定居宅サービス事業所等の職員、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、介護職員初任者研修を修了した者」のいずれかが少なくとも日中は施設に常駐するというものです。
入居している高齢者の安否確認と生活相談がサービスとして義務付けられており、夜間などのスタッフが不在の時間帯には、緊急通報システムを利用して対応する必要があります。
しかし、2022年9月に実施された高齢者住宅法関連法令の改正により、ご入居者様の事前承諾を得て条件を満たしていれば、日中のスタッフの常駐が不要となりました。
日中のスタッフ常駐が不要になる条件は、以下の通りです。
・毎日1回以上、適切な方法で居室を訪問し、安否確認を行う
・居室に緊急通報システムなどを設置し、緊急時に迅速に対応できるようにする
・電話などの適切な手段を通じて、生活相談サービスを提供する
以上の3つの条件を全て満たすことで、日中のスタッフ常駐は必要ありません。
介護型サ高住の場合
サ高住の残りの10%は、介護型です。
介護型サ高住では、食事の提供・介護・家事・健康管理のいずれかのサービスを提供しており、大きく分類すると有料老人ホームに該当します。
そのため、特定施設ご入居者様生活介護と同様に定められた人員基準が必須と設定されています。
職種 配置基準 管理者 1人※兼務可能 生活相談員 要介護者等:生活相談員=100:1の割合 看護・介護職員 要介護者:看護・介護職員=10:1
要介護者:看護・介護職員=3:1の割合
※夜間帯は1人以上機能訓練指導員 1人(兼務可能) 計画作成担当者 介護支援専門員(ケアマネジャー)1人※兼務可能
※夜勤者やパート職員として働く全員の総労働時間をベースにした、常勤換算で計算としたときの場合となります。
一般型と比較すると、対象の職種が増え、より細かい人員基準になっていることが分かります。
介護型サ高住では、看護師や介護福祉士ほか、専門的な資格を有するスタッフがいること、安否確認と生活相談以外のサービスを提供していることが特徴です。
職員が取得している資格として多いのは、介護福祉士や介護職員初任者研修となっており、介護職としての知識や技術を習得している職員が多いです。
■特許取得の離床予測を活用!テクノロジーで介護を変える見守りシステム
サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は?
次に、サービス付き高齢者向け住宅の登録基準を紹介していきます。
サ高住は、高齢者に適した規模や設備と、見守りサービス、また契約に関する基準を下記すべて満たす必要があります。
〈規模・設備〉
・各専用部分の床面積は、原則25㎡(約13.7畳)以上であること
(居間、食堂、台所などが共同利用のための十分な面積がある場合は、18㎡(約9.9畳)以上)
・各専用部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること
(共用部分に共同して利用するため適切な台所、収納設備または浴室を備えることで、共同利用部分に各戸に備える場合と同等以上の設備・環境が確保される場合は、各戸に備えなくて良い)
・段差のない床、手すりの設置、廊下幅が確保されているバリアフリー構造であること
〈見守りサービス〉
・ケアの専門家が少なくとも日中施設に常駐し、安否確認と生活相談サービスを提供していること
・夜間などのスタッフが不在の時間帯には、緊急通報システムを利用して対応すること
他施設との違い
高齢者の住まいは、サ高住の他にも「住宅型有料老人ホーム」や「シニア向け分譲マンション」が存在します。
これらの施設との違いを解説していきます。
住宅型有料老人ホームとの違い
まずは、住宅型有料老人ホームとの違いを紹介いたします。
サービス付き高齢者向け住宅 住宅型有料老人ホーム 契約形態 一定期間借りる「賃貸契約」 入居一時金を支払い終身利用できる「利用権方式」 主なご入居者様 60歳以上または要支援・要支援認定を受けている60歳未満
(自立〜軽要介護度)施設によるが原則60歳以上(自立〜軽要介護度) 提供されるサービス ・安否確認
・生活相談・日常の生活相談
・食事提供
・医療機関と連携した健康管理
・家事や買い物代行
上記のいずれか1つ以上介護保険 一般型:適用されない
介護型:適用される適用されない 居室面積 原則25㎡(約13.7畳)以上 13㎡(約7.1畳)以上 メリット ・自由度の高い生活を送れる
・初期費用が安く入居しやすい・ご利用者様同士の交流が盛ん
・サービスが手厚いデメリット ・イベントやレクリエーションが少ない ・タイムスケジュールがあるため行動が制限される
・費用が高い
サ高住は賃貸としての役割が多く、居室面積が広く自由な暮らしをしやすいことがわかります。
住宅型有料老人ホームでは、介護保険に基づいたサービスはありませんが、自立度の高い方から要介護認定を受けている方まで入居できます。
また、いずれの施設も介護付きの場合は、寝たきりの方や認知症の方の受け入れ・援助を行い、適切なサービスを届ける体制が整っているでしょう。
シニア向け分譲マンションとの違い
続いて、シニア向け分譲マンションとの違いを見ていきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅 シニア向け分譲マンション 契約形態 一定期間借りる「賃貸契約」 所有物を自由に使用できる「所有権契約」 主なご入居者様 60歳以上または要支援・要支援認定を受けている60歳未満
(自立〜軽要介護度)物件によるが、基本的に自立の方が多い 提供されるサービス ・安否確認
・生活相談物件によりさまざま 介護保険 一般型:適用されない
介護型:適用される適用されない 居室面積 原則25㎡(約13.7畳)以上 物件によりさまざま メリット ・自由度の高い生活を送れる
・初期費用が安く入居しやすい・ご入居者様同士の交流が盛ん
・設備が豪華
・売却、リフォーム、賃貸物件として貸し出し可能デメリット ・イベントやレクリエーション ・固定資産税がかかる
マンションでは、当然ではありますが安否確認や生活相談といったサポートが無いことが特徴です。家賃や居室面積も物件によって自由度が高く選べるところが一つのポイントになります。
サ高住の現状と課題
ここからは、サ高住の現状と課題について解説いたします。
需要と供給のバランスが整っていない
まず1つ目は、サ高住の需要と供給のバランスが整っていないことが挙げられます。
サ高住は2011年の制度開始以来、登録数は右肩上がりになっており、2024年2月時点で8,032棟、287,306戸です。
サ高住がここまで増加した理由は、サ高住の供給促進を図るため、国からの補助金制度が設けられたことが一因です。
建築費の10分の1や改修費の3分の1を国が直接補助し、さらに住宅金融支援機構の融資制度も活用されています。
現在、サ高住は供給過多傾向にあり、高齢者の人口が減少すると予想されている2040年以降は入居率が低下するという声があります。
人員不足によるサービスの質にばらつきがある
2つ目は、人員不足によるサービスの質にばらつきがあることが挙げられます。
サ高住は、他の福祉施設と比較して見守り付きのバリアフリー住宅という特性が強いです。
また、スタッフの人手不足により介護が必要なご入居者様への支援が不十分で、逆に運営会社の経営方針で過剰な介護サービスを契約させている場合もあります。
今後は、ご入居者様の高齢化に伴い、要介護度の重度化が予想されるため、サービス提供事業者をスムーズな流れで探すことができるようになったり、質の高いサービスを必要とするご入居者様の状況に合った適切なサービスを提供できるよう、体制を整備することが重要です。
サ高住には業務効率化が必須
質の高いサービスを提供するためには、サ高住の業務効率化が必須となります。
また、サ高住の業務効率化を推進することで、スタッフの業務負担を軽減できるでしょう。
効率化できるところはシステムを導入していく
効率化できるところは、システムを導入していくことが大切です。
厚労省は、介護現場におけるICT化の推進を支持しており、施設の形態に合わせたさまざまなシステムが市場に提供されています。
現在は様々な業務効率化を目的としたシステムがあり、今後の施設運営に役立つ可能性があります。
今回は異なるシステムに対して、ある程度カテゴリ分けをしましたので、その中の一部を紹介します。
・介護システム
・医療介護連携システム
・シフト作成システム
・会計システム
・予定管理
・記録管理
・請求管理
・データ計算、分析
・見守りシステム
こういったシステムを使うことで、従事者の業務負担を分散させ簡単にできるものは仕事を置き換えていくことは今後必須になってくるでしょう。
サ高住の安否確認の頻度
現在のサ高住の安否確認の頻度は、法律で「1日1回」と定められています。
しかし、ご入居者様が安全で健康な状態を保つためには、1日1回の安否確認では少なく不十分だと言えます。
一回の巡視以外の時間はどんな状況か判断できないので、外出しようと立ち上がって転倒してしまったといったことも比較的起こると考えられます。
見守りシステムを導入するメリット
先ほどのお話を踏まえると、サ高住では夜間はスタッフ数が少ないケースが多いため、転倒や事故のリスクが高くなります。
年を重ねるごとに足腰の筋肉は衰えますので、日常生活を送る中で当然転びやすくもなります。骨折やケガを通して寝たきりになる、といったことも考えると日頃の見守りや状況把握は非常に重要と言えるでしょう。
見守りシステムを導入することで、要介護者の行動パターンや状態変化を遠隔から把握できます。また、スタッフ間で情報共有をスムーズに行える点も大きなメリットです。
サ高住では、複数の介護職員が1人のご入居者様に関わります。
例えば、日勤者と夜勤者との情報共有を口頭のみで行い、その結果として認識のズレが生じてしまうかもしれません。
見守りシステムを導入すると、蓄積されたセンサーデータを元に確に情報を共有でき、転倒や事故が起こってしまった理由や改善策を検討しやすくなります。
さらに、業務を効率化することでスタッフの業務負担が軽減されるため、スタッフの離職率が低下するでしょう。
人材不足や離職率の高さに悩みを抱えている施設は、スタッフの定着率を向上させるために、積極的にシステムを導入することがおすすめです。
システム導入時の注意点
メリットが多くあるシステムですが、導入時にはいくつかの注意点があります。
1つずつ見ていきましょう。
導入する目的を明確にする
同じサ高住でも、事業所の規模やサービス内容によって解決すべき課題は異なります。
導入する目的や要件を明確にしないと、悩んでいる課題を解決できないかもしれません。
システムを無駄にしないためにも、導入前に課題分析をすることで何を解決するかという方針を決め、解決の優先順位を整理しておきましょう。
サポート体制が整っているサービスを選択する
システムの操作方法や、動作不具合が起きた際のサポート体制が整っているサービスを選択しましょう。
「電話の接続性」や「迅速な対応ができるのか」、「非常時のデータバックアップに問題はないか」などは、システムの導入時にしっかりと確認してください。
導入前に、無料体験やシステムのデモンストレーションができるものを選択しておくと安心です。また、そういった事前のデモができるかどうかHPやサイトで詳細を確認するのも忘れないようにしましょう。
改定に対応しているシステムを選び導入する
介護報酬改定は、3年ごとに実施されます。
改定に対応していないシステムを導入すると、余計な手間や料金がかかるため注意しましょう。
基本的には、ほとんどのシステムが介護報酬改定に対応しているはずですが、導入する際は事前に確認することをおすすめします。
また、夜勤職員配置加算といった取り組みも視野に入れることが大切です。
夜勤職員配置加算では、主に入所系施設で働いている介護士と看護師について、通常より人員基準を多く配置することで安全性を高め、また見守り機器を使用することで0.9人分としてカウントするといった内容でした。
こういった施設運営の援助となるような加算を受けるかどうかも導入における重要なポイントになるでしょう。
スタッフやご入居者様とその家族に承諾を得る
システム導入前には、スタッフに使い方をレクチャーしておく必要があります。
スタッフの中には、システム導入に抵抗感を感じたり、機械を扱うことが苦手な人がいるかもしれません。
そのため、システムを導入することで得られるメリットを提示し、事前にスタッフの承諾を得るように具体的な対策を考えておくことも大切です。
また、監視カメラを設置している施設は、契約時にご入居者様やそのご家族に承諾を得ることが重要です。
何も説明せずに部屋や施設に監視カメラを使用すると、プライバシーを侵害したり、ご入居者様のQOLを低下させたりする可能性があるかもしれません。
まとめ
今回は、サービス付き高齢者向け住宅の人員基準や設置基準、他施設との違いについて解説しました。
サービス付き高齢者向け住宅には、日中は1人以上のスタッフが常駐しています。
介護型サ高住は、ほとんどが有料老人ホームに該当するため、一般型と比較して人員配置が厳しいのが特徴です。
今後は、スタッフの人員不足によるサービスの質の低下を防ぐため、今回ご紹介した効率化の一覧を参考に、業務効率化を検討してみてはいかがでしょうか。
ご施設で見守りシステムを導入する際に事前に相談したい、と思われたときは介護現場でのICT導入を経験した営業担当者が今できることからサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。