作成日:2024/03/27
更新日:2024/10/23
介護老人保健施設について解説
皆様は介護老人保健施設をご存知でしょうか?介護老人保健施設とは、一般的に老健と略される介護保険施設のことです。都道府県の指定された開設基準を満たし、許可を得た社会福祉法人などが運営しています。
本記事では、介護老人保健施設の基本的な特徴と人員基準について概要を解説します。
1-1.入所条件やおおよその入所期間
介護老人保健施設とは介護が必要な状態の高齢者に対して、自宅での生活ができるようになることを目標として支援を行う施設のことです。関わる職種は幅広く、様々な医療職と介護職が関わります。
それぞれの職種がチームで関わり、利用者一人一人に合わせた支援を行うことで、日常生活が自立できるように促します。
基本的に日常生活の支援とともに心身のケアを総合して行うことを目的としており、介護老人保健施設は入所しながらリハビリテーションを受けることができる施設のため、夜間でも介護福祉士や看護師が利用者の見守りを行なわれています。
入所できる条件はいくつかあり以下のようになっています。
・介護保険法の被保険者で要介護認定を受けた要介護1以上の方
・病状が安定している方(疾患が急性でない状態)
・リハビリテーションが必要な方
介護老人保健施設の入所期間は原則3ヶ月です。しかし、自宅復帰ができないと判断されるとその後に入所期間の延長を認められるケースもあります。
実際、厚生労働省によると2016年における介護老人保健施設の平均入所期間は300日とされています。
1-2.施設類型と設備
介護老人保健施設は「超強化型」、「在宅強化型」、「加算型」、「基本型」、「その他型」に分類されています。それぞれの施設基準の要件を下記の表に示します
在宅復帰・在宅療養支援等指標とは、1.在宅復帰率、2.ベッド回転率、3.入所前後訪問指導割合、4.退所前後訪問指導割合、5.居宅サービスの実施数、6.リハ専門職の配置割合、7.支援相談員の配置割合、8.要介護4又は5の割合、9.喀痰吸引の割合、10.経管栄養の実施割合の10項目の基準値によって点数化される指標です。
これらの基準によって介護老人保健施設は5つの類型に分かれています。類型が高い施設であればあるほど、在宅復帰率や利用者を支援する能力が高い施設とみなされます。5つある類型の種類のうち、超強化型が最も高い位置付けになっています。
参考:在宅強化型介護老人保健施設の報酬・基準について
また、介護老人保健施設は必要な設備として、1.療養室、2.診察室、3.機能訓練室、4.談話室、5.食堂、6.浴室、7.レクリエーション・ルーム、8.洗面所、9.便所、10.サービス・ステーション、11.調理室、12.洗濯室又は洗濯場、13.汚物処理室があります。
各項目においてさらに詳細に条件が決まっているため、詳しくは厚生労働省のHPをご確認いただけますと幸いです。
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2.老健の設置基準と人員基準
介護老人保健施設の療養室には設置基準が決まっていますので、それぞれの内容について理解していきましょう。
2-1.老健の居室形式
療養室の居室形式は大きく分けて従来型とユニット型に分かれます。
従来型における設置基準は、次のように介護保険法で定められています。
1. 療養室の定員は4人以下
2. 入所者1人当たりの床面積は8m2以上
3. 地下室に作ってはいけない
4. 一つ以上の出入り口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設けること
5. 寝台又はこれに代わる設備を備えること
6. 入所者の身の回り品を補完できる設備を備えること
7. ナース・コールを設けること
参考:介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成十一年厚生省令第四十号) 第三章 施設及び設備に関する基準 より
ユニット型は共同生活室を囲んだ個室を1ユニットとした形式です。ユニットごとの入所者は概ね10人程度、多くても15人以下と決まっています。
また、対象となる療養室は基本的に1人のみ入居可能ですが、療養上必要であれば2人まで入居することができます。基本的な決まりは従来型と同様ですが、療養室の床面積を10.65m2にする必要があります。
2-2.老健に必要な職種と仕事内容
介護保険法では介護老人保健施設における必要な職種とその人員基準について規定しています。
必要な職種は、医師、看護師または介護職員、支援相談員、理学療法士または作業療法士・言語聴覚士、栄養士または管理栄養士、介護支援専門員、調理員、事務員とされています。
医師は、介護老人保健施設の入所者やショートステイを利用される方の健康管理及び診断・治療、リハビリテーション職員や看護師への指示を行っています。病院で求められるリーダーとしての役割と違い、多職種連携を促しチームが円滑に機能するよう調整する能力が求められます。
看護師・介護職員は入所者の身体介護を含む生活支援を行い、必要時に看護職員は医療的なケアも行います。
支援相談員は他施設では生活相談員と呼ばれる職種に相当し、介護に関する利用者やその家族の相談業務が主な仕事内容になります。ほかにも、地域に対する窓口業務や関連機関とのやり取り・個別支援計画書の作成を中心に行います。
理学療法士・作業療法士は利用者に合わせて目指すべきゴールを設定し、日常の動作に関わる機能の回復・維持のためにリハビリテーションを行います。言語聴覚士は主に嚥下やコミュニケーションに関わる支援をサービス提供します。
管理栄養士は入所者の状態に合わせた食事内容の提案を行います。介護支援相談員はケアマネージャーと呼ばれており、利用者に合わせたケアプランの作成を行います。
このように介護老人保健施設は他職種がそれぞれの専門性を発揮し、連携をすることで利用者の生活支援を行なっています。
2-3.職種ごとの人員配置基準と計算方法
では、それぞれの職種ごとに介護老人保健施設における人員基準の解説を行います。
まず、介護老人保健施設の人員基準の説明の前に常勤換算という計算方法を解説します。
常勤換算とは、介護施設で働いている職員の平均人数を計算する方法です。計算方法を下記に示します。
常勤換算人数=常勤職員の数+(非常勤職員の労働時間の合計÷常勤職員に定められた勤務するべき時間)
この計算方法を使用し、介護保険法の「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」第2条で職種ごと定められた人員基準を満たしているのかチェックします。
〇医師:入所者100人あたり1人以上
〇薬剤師:介護老人保健施設の実情に応じた適当数
〇看護師または介護職員:入所者3人あたり1人以上 看護師が介護職員との比率が2:5程度になるように配置する必要あり
〇理学療法士または作業療法士、言語聴覚士:利用者100人あたりいずれかの職員が1人以上
〇栄養士または管理栄養士:入所者100人以上の施設では1人以上
〇介護支援専門員(ケアマネージャー):最低1人以上 入所者100人あたり1人以上
〇調理師・事務員等:介護老人保健施設の実情に応じた必要数
以上が介護老人保健施設における人員基準となっています。有料老人ホームなどと比較して一定数の十分な人手が必要となっていることが特徴です。
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3.人員基準を満たせないときの解決法
現在、厚生労働省の介護老人保健施設における人員基準を満たすことができない施設の事業者の方もいらっしゃるかと思います。そこで、人員基準を満たせない時の解決方法について解説します。
3-1.働きやすい環境づくり
まず初めに検討するべき点としては、介護老人保健施設の人員基準を満たすための最も重要な対策は働きやすい環境づくりを行うことです。
なぜなら、一度採用したスタッフに長く勤務をしてもらうことが介護老人保健施設の人員基準を満たし続けるなによりの対策になるためです。
具体的な内容としては給与などの待遇の改善などが挙げられますが、人件費を上げることが難しい施設は多くあります。
そのため、取り組みやすい対策は休みに関する処遇の改善が挙げられます。介護老人保健施設では、様々な勤務形態があり、勤務形態によっては休みが取りづらい場合もあります。
ですので、それぞれの介護職のライフスタイルに合った勤務形態を設けることで、結果として離職率の低下につながるかもしれません。
3-2.求人媒体への出稿
人員基準を満たすために必要なこととして、職員の採用数を多くするという考えがあります。その対策としては求人媒体、特に転職サイトなどのインターネットを利用した媒体への出稿が有効です。
現在、転職を考える方は紙媒体やハローワークよりも始めに転職サイトを確認される方が多くいます。サイトによっては、業種などのお気に入り登録をしている方に自動でメール配信してくれるサイトなどもあるので、非常におすすめです。
3-3.自社メディアの運営
他に挙げられる対策としては自社メディア、つまり介護老人保健施設のHPを作成するなどの方法があります。
HPを作成するメリットとしては、提供しているサービスのアピールや採用ページへのリンクなどを作ることで、転職希望者の目に留まりやすくなり、施設のアピールを行うことができます。
HP作成はHP作成会社に依頼することも可能ですが、コストを抑えたいのであれば、Word Pressなどを使用し、自社でも作成するという方針をとることが可能です。
また、継続的に発信をする点を考えると、求職者だけでなくご家族様に向けた内容や従事者向けの発信を定期的に更新できる体制も整えるよう意識しましょう。
3-4.見守りシステムの導入
ここまでは離職と採用に関する対策を解説しましたが、それでも人員基準を満たすことが難しい介護事業所もきっとあるでしょう。
令和3年度の介護報酬改定で見守り機器等を導入した場合における人員配置基準の緩和が発表されました。
この制度は、見守り機器やインカムなどのICTを利用した機器を導入することで夜勤帯における人員配置基準を緩和するものです。
この措置では、夜間における人員配置が利用者数25人以下では1人、60人以下では2人、80人以下では3人、100人以下では4人以上必要なところを、要件を満たすことで、利用者数25人以下では1人、60人以下では1.6人、80人以下では2.4人、100人以下では3.2人以上まで減らすことができます。
そのため、職員の休みなどの処遇改善はもちろん、夜勤帯の訪室負担や業務時間の効率化につながり、とてもおすすめです。
4.人員配置基準に悩んだら見守りシステムを検討してみましょう
ここまで、介護老人保健施設における人員配置基準とその対策について解説を行いました。様々な対策はありますが、近年で業務負担や人員配置の対策を目的としてICTを利用した見守りシステムを導入する施設が増加傾向にあります。
見守りシステムを導入すると上述の人員緩和だけでなく、見える化が促進され介護職員の業務負担の軽減にもつながります。
また、スタッフの人員配置が少なくなってしまうと見守りが不足してしまうことによる転倒を招いてしまったり異変の早期発見が遅れてしまったりします。
慢性的な人員不足に悩む管理者の方にとって、日常のケアの質の向上や転倒防止などを図ることができるので、ぜひ前向きに見守りシステムの導入を検討してみましょう。
5.老健で人員配置基準を満たすのはなぜ難しい?
介護老人保健施設における人員基準や解決方法は上述しましたが、事業者によってそれでも人員基準を満たすことが難しいケースもあります。
ここではなぜ人員配置基準を満たすことが難しいか、またそれによる注意点やポイントについて解説いたします。
5-1.離職率が高く人員確保が必要
介護老人保健施設では人員基準を満たすため上述の基準に応じた職員数を採用する必要があります。しかし、介護老人保健施設の看護職員における離職率は14.6%(令和元年)と低くありません。そのため、離職を防ぐための対応が必要になります。
対策方法は、職員の待遇の改善などの対策が挙げられますが、離職には様々な理由があるため、完全に離職者をなくすことは困難と言えるでしょう。
5-2.採用するのが困難
現在の日本は超高齢化社会を迎えており、介護職における人手不足が問題視されています。
介護老人保健施設でも同様の問題が起きており、採用が難しい状況続いています。そのため、新しい職員を採用するために待遇の改善などの工夫を行う必要があります。
5-3.人員基準欠如減算について
人員基準の注意点として、人員基準欠如減算があります。簡単にいうと上述の人員基準を守れていない介護老人保健施設に対して減算を行う決まりです。
この減算を受けてしまうと、介護報酬のうち30%もの減算を受けてしまうため、注意が必要です。
6.まとめ
本記事では介護老人保健施設の基本情報と厚生労働省が定めた人員基準について解説をしました。介護老人保健施設では、人手不足などの問題があり、人員基準を満たすためには様々な工夫と見直しが必要になります。
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