作成日:2024/08/12
更新日:2024/10/23
少子高齢化が進む日本において、医療と介護は重要な関係です。2025年度にさしかかっている中で現在、介護では深刻な人材不足に直面しています。
2035年には69万人の介護人材が不足すると予測されています。この記事では介護業界の人材不足の現状や原因、そして解決策までの関連を掘り下げ、ICTと併用した環境作りに焦点を当てながら解説していきます。
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介護業界の人材不足の現状とは
どのくらい人材が不足しているのか
現在、少子高齢化となっている日本にとって、人材不足は深刻な問題です。介護業界も大きな課題となっています。
経済産業省が2018年に出した報告書では、人材供給が2035年には、約228万人に対して需要は297万人と高く、約69万人が少ないと発表されています。
また、2025年では、介護人材が約32万人不足する動向となっています。2025年から2035年にかけて、介護人材は倍以上に増加する推移となっています。
都心部で深刻化が顕著
厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数(都道府県別)」を参考に東京都、大阪、愛知の介護職員必要数は以下の一覧になります。詳細は参照元をご覧ください。
東京都:2025年 3万949人 2040年 7万2338人
大阪: 2025年 2万4420人 2040年 6万7539人
愛知: 2025年 1万3370人 2040年 3万4572人
参照元:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323_00005.html
上記の人数が現在足りていない状況を記載しています。(現状推移シナリオによる職員数―必要数)
介護業界の人材不足の原因
介護の職場では、多様な人々との関わりや世代間の価値観の違いなど、独自の人間関係の課題が存在します。
特に、忙しい業務環境ではコミュニケーションの不足やエラーが起こりやすく、問題を抱え込んでしまう従業員も少なくありません。
人材不足が起こるきっかけになる主な原因について、分かりやすく解説します。
職場の人間関係
●様々な人との関わり
介護の仕事では、スタッフやご利用者様、家族等、色んな人との関わりがあります。苦手な人との関わりも避けることはできないため、ストレスにより負担がかかってしまい健康を害してしまうこともあります。
●世代間の価値
介護業界では、様々な年齢層の人が働いています。世代ごとによる価値観の違いでトラブルやストレス過多になってしまいます。
●業務が多いため、コミュニケーションエラーが起きる
人手不足のため、一人ひとりの業務負担は多くなってしまいます。忙しさのあまり、思いやることができず、コミュニケーション自体が図れなくなってしまいます。また、現場としての雰囲気も悪くなってしまい悪循環になってしまいます。
●問題を抱え込んでしまう
業務を行っていく中で、悩みは常に出てきます。しかし、気軽に相談する相手がおらず、1人で抱え込んでしまい、離職してしまうケースもあります。従業員に相談できる環境を整えることも必要です。
社会的評価が低い
●給与や待遇の問題
介護報酬の影響が賃金や待遇での低さ・悪さが大きな要因となっています。この悪さが社会のイメージとなり求職者を減らしていると言えます。
●厳しい労働環境
人手不足のため、一人ひとりの労働負担は多いのが現状です。「大変」「きつい」という3つのイメージがあるため、社会的評価の低さに繋がっています。そのためにも具体的に準備をしていくことが必要です。
●キャリアアップの難しさ
キャリアアップが行えることが困難な点もあります。こうしたことが社会的評価が低い1つと考えられます。キャリアを重視する人もいるため、キャリアパスが見えやすくなるよう改善していくことで社会的評価の改善に繋がると考えられます。
●メディアによるイメージ
ネガティブなニュースやその他の情報で社会全体の評価に繋がっています。介護施設での事故や暴力などが介護業界全体の社会的地位低下に繋がることが挙げられます。
高い離職率
2022年度の「介護労働実態調査」では介護職員の離職率は14.4%と報告されています。前年度より0.1%上がっています。
介護事業所によって離職率の差があります。介護事業所の規模が小さいところや開業して日が浅いところは特に%の数値が高い結果のようです。
少子高齢化社会における労働者人口の減少
日本の総人口は、徐々に減少しています。総務省統計局によると2022年5月時点で、生産年齢(15歳〜64歳)は7420万人です。
この数値は総人口の60%を占めています。2040年度には5978万人となり、53.9%まで低下すると予測されています。また日本は最も高齢化が進んでいる国となっています。
2023年時点で、65歳以上が3623万人。総人口に占める割合は29.1%に達しています。特に75歳以上は2000万人を超えたとのことです。高齢者はもっと増え、要介護認定者も2035年には、988万人に達する見込みです。
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介護業界の人材不足の対策について
介護業界の現場では、ユニットケアの導入やITシステム、外国人人材の雇用など、さまざまな取り組みが進められています。
これにより、入居者様の生活の質向上や業務の効率化、そして人材不足への対策が図られています。
介護業界での人材不足を解決するためにも、以下のような対策を講じることができます。
ユニットケアの導入
ユニットケアとは、介護施設などでご利用者様一人ひとりに対して、より個別化されたケアを提供するためのケア方式の一つです。
この方式では、少人数のグループ(ユニット)を編成し、そのグループが専任のスタッフと一緒に生活を送る形をとります。
具体的には、10名前後の少人数のユニットが1つの生活単位として機能し、ユニット内では個別の居室と共用のリビングやキッチンが設置されています。
スタッフはこのユニットに密着してケアを行うため、ご利用者様一人ひとりの好みや生活リズムに合わせた支援が可能になります。
ユニットケアを導入することで、職員は専門性を高めることができ、自身の成長を実感しやすくなります。また、スキルアップや自己成長の機会が増えることで、仕事に対する満足感が向上し離職率の低下につながります。
メリット1:入居者様の生活の質が向上する
メリット2:スタッフと入居者様の信頼関係が深まりやすい
メリット3:入居者様の小さな変化に気づくことができる
メリット4:個々の対応になるため、介護職員のスキルアップにつながる
デメリット1:個別ケアのため、情報収集や記録などに時間がかかる
デメリット2:個々の情報を把握するのに時間がかかる。
デメリット3:個々の対応時間が長くなってしまう可能性がある
ITシステムの導入
ITシステムの導入も人材不足対策の一端を担います。
ペーパーレス化や業務効率の向上が実現すれば、例えば、手作業での記録作成や資料の整理にかかる時間が大幅に短縮され、介護職員がご利用者様との対話やケアにより多くの時間を割くことができるようになります。
効率化が進むことで、職員の負担が軽減され、長期的な勤務が可能になります。
また、近年ではインカムとの連携も注目されており、職員間での情報共有がスムーズに行えるようになります。
これにより、情報の行き違いやミスが減少し、各職種間の連携が強化され、各職種それぞれの役割に専念しやすくなり、負担が軽減されます。
以下に、ITシステムの導入メリットを紹介します。
メリット1:業務の効率化
介護記録をデジタル化することで、資料がいらなくなり、ペーパレス化を行なうことができます。情報を一元管理によって、情報共有がスムーズになります。また、記録作成時間の短縮を図ることができます。
メリット2:サービス品質の向上
効率化を図ることで、できた時間をご利用者様とのケアに当てることや、事務作業などに充てることができます。
メリット3:業務間の連携効率化
介護現場では、様々な職種が関わっています。データを共有することが簡単になることで、連携が滞りなく行なうことができます。
メリット4:行政手続きが簡単におこなえる
LIFEへのデータ提出など、行政とのやり取りが簡単に行なえるようになります。
デメリット1:システム選択の難しさ
施設の規模や業務内容などに合わせたシステムを選択することが大切です。様々な種類があるため、わかりにくく感じてしまいます。
外国人人材の雇用
人材不足の施策として外国人介護人材の受け入れがあります。申請・登録することも一つの方法です。
海外人材として、特定技能として就労する方も増加しています。2023年1月には17,066人に達し、急激な増加が見られました。
今後は介護業界の人手不足を背景に、海外人材と働くグローバルな働き方になることが予想されています。
メリット1:若い労働力を確保でき、人材不足に有効。
メリット2:地方でも外国人労働者を採用することができる。
メリット3:異なる地域や文化を持つ人材が入ることで、違った視点を得られる。
デメリット1:コミュニケーションの強化
日本語の簡単な言葉で短く話すことや、ジェスチャーを使うなどの工夫が必要となる。
デメリット2:業務のマニュアルの整理
外国人労働者向けのマニュアルを作成や管理することが必要となる。
介護職のイメージアップを行う
まだまだ介護職に対するネガティブなイメージを持つ方がいらっしゃることも多く、3Kのイメージが強く人材獲得の妨げとなっている場合も多いです。
イメージアップにより、こうしたネガティブな印象を払拭し、介護職の魅力を伝えることができます。
介護職には、人の役に立つ喜びやプライベートとの両立、資格取得によるキャリアアップなどのポジティブな側面があります。
また、政府による処遇改善による介護職員の賃金や待遇の改善は、職業の魅力を高める要素となります。
キャリアパスといった長期的な視点で介護職に就くことを考える人材を惹きつけることで、人材確保をしていくといったことも大切でしょう。
●介護の仕事を積極的に発信する
介護の仕事のやりがいや魅力、特徴などを伝えることが有効です。介護職員が普段から気を付けていること、嬉しかったこと、日常の様子、感じたこと、イベントなど取り組む姿を配信していくことで様子が分かり、イメージアップに繋がります。
その時の個人情報の取り扱いには注意が必要です。
●専門性をアピールする
介護職が介助するだけでなく、専門的な知識や技術が必要であることを伝えていきます。声 かけの仕方や声のトーンの違いなど、一般の人にとっては知らないことはたくさんあると思 います。
また、研修制度やキャリアアップの発信を増やすことも大切です。キャリアアップ後の職員にインタビューした動画を投稿するのも効果に繋がります。
●処遇改善取り組み
介護保険の処遇改善加算の取得や給与など、待遇面で支援している実績をアピールすることが必要です。職員の給付にプラスになります。給与が低いというイメージを変えていくことが重要です。
●働きやすい環境
ITシステム導入により、業務の効率化や他職種とのコミュニケーションがスムーズになり、安全で働きやすい職場環境を作ることが重要です。その内容を発信することで、3Kと言われる「きつい」「汚い」「危険」のイメージの改善に繋がります。安心して働くことができます。
●多職種による多様性をアピール
介護職が年齢や性別に関わらず、活躍できる職場、希望が持てる職場であることをアピールすることが重要です。女性・男性職員や若手職員など多様な方が活躍していることを紹介することで、期待に繋がり人材を増やすことに繋がります。
資格の取得を推奨、支援する
資格取得を支援することで、職員は専門知識や技術を身につけることができます。
専門性が高まることで、それに伴い質の高いケアが提供できるようになり、ご利用者様の満足度も職員自身のやりがいも増し、定着率が向上します。
また、資格取得に対する支援金やサポートをすることでモチベーションも上がるでしょう。
●キャリアアップの促進
介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修、介護福祉士などの取得を支援することが大切です。支援することで、介護職員のキャリアアップを促すことができます。職員の経験や能力が向上し高度なケアを提供することができます。
●モチベーション向上
資格取得を支援することで、職員の欲求を満たすことができ、仕事へ対してのモチベーションを高めることができます。また、自己成長したいと考えている職員の成長に繋がり、人材の定着が図れます。
●費用の軽減
資格取得するには、費用がかかってしまいます。会社側が負担することで、職員の経済的負担を減らすことができます。
●スキルの向上
資格取得をすることで職員のスキル向上が図れます。それにより質の高いケアを実施することが可能になります。
●人材確保の定着
資格取得を支援することは、人材を引き寄せる魅力の一つとなります。経済的負担を減らすことは人材確保に影響を与えます。
●加算取得の可能性
有資格者の配置が義務付けられています。資格取得の支援は条件を満たすために役立つため、加算の取得に繋がる可能性があります。加算が職員の給付に貢献できるため、 法人が確認していく必要があります。
●自治体の支援と取り組み
若手職員の研修会や意見を交換する場を設けたり、独自の支援や奨励金などそれぞれの県で行なわれています。外部と協力する成果を参考にするのも方法の一つです。
ICT導入で業界の人手不足を解消する
介護業界の人手不足の解決策として、LASHIC(ラシク)があります。
介護施設の効率化や職員の負担を軽減するサービスです。
●見守りシステム
全国の介護施設でよくある事例として、夜間の徘徊の傾向がよくあります。そのため夜勤の職員は、見回りをして対応しています。
しかし、見守りシステムを導入することで、高齢者の体温や離床をリアルタイムで確認して、異常があった場合はすぐに対応できるようになります。これがあることで、夜勤の職員の負担を軽減することでき、事故を未然に防ぐことができます。
●クラウドシステムの活用
施設内の情報共有を効率化して、職員同士のコミュニケーションをスムーズにすることができます。ご利用者様のアセスメントとして活用することもできるため、ケアの質を向上することができ、安定したサービス提供が行えるためおすすめです。
●デジタル化による業務の効率化
介護記録や勤務管理などをデジタル化することで、職員の業務負担を軽減することができます。業務を効率化することで、時間の余裕が生まれ、残業時間の削減にも繋がります。また職員の育成にも時間を充てれます。
デジタル化は将来、人材不足の介護現場において必ず必要になってきます。操作など難しいと思うかもしれませんが、スタッフ間でサポートしてICT導入を進めていくことも大切です。
まとめ
内閣府の令和6年(2024年)版高齢社会白書の概要を見ると、高齢化率が65歳以上で29.1%見込みなっています。
これは、今後も大きく上昇する予測です。しかし、生産年齢(15歳〜64歳)は少ないです。少子高齢化の中で福祉は重要な分野です。実際、介護業界において、人材不足は深刻な課題です。
求人サイトで募集をしても獲得が困難な状況です。その1つの背景に、辞めた理由として人間関係が多いという調査もあります。そのため事業者は環境を整備することが大切です。
また、求職者や従業員が求めている点を理解して、解決する方法を考えていくことが必要です。これから従業員に「前の職場と比べ今の職場が良い」と言ってもらうように検討していく必要があります。
近年、条件はありますが、海外から労働者の受け入れやSNSの発信が主流となり、政府もデジタル化を推進しています。SNSは月額ではなく、無料で行えるため手軽にできます。介護職員のイメージ向上を行なうことで応募や就職へ繋げることができます。
イメージアップに繋がることを掲載することで、転職や派遣にも繋がる可能性があります。ICT導入し利用することは、不安が多い未経験者でも従事できるような環境を作ることができます。
日々のシフト管理体制はとても大変な業務です。環境が整備されることで、続けて働けることができ、希望のある職場になるでしょう。
利用の際は、利用規約や個人情報保護に留意し今一度、方針を改めて更新や見直しをするのも重要です。