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【対応事例付き!】福祉施設・介護施設での離職率を下げるには?

作成日:2022/04/25

更新日:2024/10/23

介護士の年々採用コストがあがり、募集してもなかなか採用に至らない施設さまも多いのではないでしょうか。介護士の離職率は他の業種と比較すると平均的ではありますが、業界経験者・希望者が限られるため新規採用がとても難しいです。
そこで今回は、介護士・職員が離職する原因の分析から、効率的に離職率を下げる方法について解説していきます。

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介護職における離職率の現状

一般的に介護職の離職率は高いという認識があるのではないでしょうか?しかし、実際は他の産業や会社と比較するとあまり変わらないとの調査結果があります。本項では、介護職における離職率の現状について解説します。
 

他の業種と比べて特段高いわけではない

公益財団法人介護労働安定センターが介護施設を対象に行なったアンケートでの実態の調査では、令和5年度の介護職における離職率は13.1%と報告されています。


引用:介護労働安定センター 「令和5年度介護労働実態調査」
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023_jittai_chousagaiyou.pdf
 
この数字は、厚生労働省が行なった令和3年度の雇用動向調査の結果と見比べると、他職種より高い数字ではありません。
この調査では宿泊業・飲食サービス業の離職率が25.6%、生活関連サービス業(娯楽業)の離職率が22.3%と報告されており、全体を見ると介護職よりも離職率が高い業界がいくつもあることがわかります。
では、なぜ介護職の離職率は高いイメージがあるのでしょうか。厚生労働省の資料によると、平成22年度の介護職の離職率は17%となっており、この数字は他の産業と比較しても高い値となっています。
つまり、15年前までは介護職の離職率は高くこの時のイメージが残っている人が多いためであることが大きな理由と考えることができます。
介護職の離職率は平成22年度から徐々に低下しており、令和5年度に約13%まで低下しています。現在も離職率は少しずつ低下しており、今後も低下していくことが予想されます。
 
参考:厚生労働省 雇用動向調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/gaikyou.pdf
 

人材不足に悩む事業所も多い

上述した介護労働安定センターの資料の中では、介護職の採用率についても調査がされており、令和5年度の介護職の採用率は16.9%と報告されています。
採用率が離職率を上回ると職員数は増えます。このことから介護職の人員は少しずつ増加していることがわかります。
介護職員の数は少しずつ増加していますが、現在の日本は超高齢化社会となっており介護需要は年々増加傾向にあります。
厚生労働省が発表した資料によると2023年の介護職員の必要数は233万人とされています。令和3年度の全国の介護職員数が210.6万人であることを考えると、23万人も介護職員が不足していることがわかります。
このことから企業によっての違いはありますが、介護職員の数は足りていない施設が多いです。
また、介護労働実態調査では従業員の過不足状況を見ると64.7%の施設が不足感を感じている結果となっています。


引用:介護労働安定センター 「令和5年度介護労働実態調査」
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/2023_jittai_chousagaiyou.pdf
 
職種別で見ると訪問介護職員と介護職員が特に不足していると報告されています。地域別で見ると、地方よりも東京や大阪などの都心部でより介護の事業を行う人手不足が顕著になっています。
これらのことから、他職種と比較して離職率が高くなくても介護職は慢性的に人手不足であることがわかります。

 介護職の主な離職理由とは?


介護職の離職率が特別に高い訳ではないことは上述で説明いたしました。
 
しかし、介護職の離職率13.1%と比較すると令和5年度における全産業の離職率の平均は8.7%であり、介護職の離職率は平均よりも高いことがわかります。
ここからは介護職が辞めてしまう理由について解説します。
 

人間関係のトラブル

令和5年度の介護実態調査では、介護職の離職理由の1位に人間関係のトラブルが挙げられており、その割合は34.3%を占めていました。
介護職の特徴として職場内でコミュニケーションを取る機会が非常に多く、人間関係に問題が起きることも多いとされています。
仕事上で関わる方は職場内のスタッフや利用者、その家族など非常にたくさんの方と人間関係を構築する必要があります。職場内のスタッフは介護福祉士、看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、資格を有さない職員など非常に多くの職種が勤務しています。
 
また、介護職員は年齢や社会的な背景が多様である場合もあり、職員間での価値観の違いも大きい職種です。そのため、職員同士でもトラブルが起きてしまう可能性があります。職員同士のトラブルがあると仕事を続けづらくなってしまいます。
利用者やその家族とのコミュニケーションはケアをする際だけでなく、様子を見に行った際などにも一言程度のやりとりを行う必要があります。
 
介護施設で関わる利用者の中には、認知症を患っている高齢者もいるため、中には普段ケアを行なっているスタッフに対して暴言を吐いてしまう方もいます。
ケアを行なった利用者やその家族からひどい言葉を言われてしまうと無気力感を感じ、働く意欲がなくなってしまう介護職も少なくないようです。
このように職員間でのトラブル、利用者とのコミュニケーションのトラブルが原因となって離職してしまう介護職は非常に多くいることが分かります。
 

結婚・妊娠・出産のため

介護職に限らず、女性の退職理由の1位は出産であり、結婚と合わせると実に30%以上に及びます。
介護職では令和元年度の離職理由の2位は結婚・妊娠・出産のためでした。介護現場での仕事内容は身体的・精神的に負担がかかる業務が多くあります。
 

引用:(公財)介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/h29_chousa_kekka.pdf
 
妊娠して安定期に入る前はつわりなどの身体的な症状が出てしまうこともあり、その状態で利用者のケアなどの業務を行うと切迫早産のリスクなど、お腹の中の赤ちゃんへの影響でてしまう可能性があります。
 
また、安定期を迎えた後でも肉体への負担は大きく、腰痛などの身体症状に繋がってしまうこともあります。無事に出産を終えた後も家庭での役割が変わり、今まで通りに仕事を行うことが難しくなってしまうことも考えられます。
このような現状があり、結婚・妊娠・出産のために介護職を退職される方は少なくないと言えます。
 

給与と待遇

介護職の離職理由として給与面や待遇面が不十分であることが挙げられます。介護福祉士の平均年収は397万円前後と言われており、日本人の平均年収461万円と比較すると少し低いことがわかります。

参考:日本福祉教育専門学校 介護士の平均給与
 
要介護者のケアは心身の負担が大きいため、このような待遇に不満を持つ介護職も少なからずいるようです。特に未経験や無資格の介護職員は有資格者と比べると給料が低いことが多くあります。
 
また、資格の有無にかかわらず、勤続年数が増えるとリーダー業務など、業務の負担が増えていきます。このような業務量の増加は、業務内容に対して収入面がつり合っていないという考えに繋がってしまうこともあるようです。
待遇面に関しては、人員不足の問題と関わる点が多く挙げられます。介護職はシフト制であることが多く、休みは希望休を提出して上司が休み調整を行います。
この際に、人員が不足していると希望休が重なったり、夜勤に入れるスタッフが他にいないなどの理由で希望休が通らないこともあります。せっかくシフト制で予定調整が行いやすいと考えて介護職を選んだスタッフからすると、このような状況は離職の理由に直結してしまいます。
 

将来性についての不安

介護職は将来性について不安があり、離職をする方が13.2%います。介護施設の収入源の多くは介護保険による報酬が占めています。
そのため、介護施設が大幅な収入をアップさせることは困難な状況にあります。施設の収入を大幅に上げることが難しいため、職員の給与も一気に上がるよりも毎年少額ずつ昇給するケースが多く、将来的な不安を感じる方も多いでしょう。
また、人事の評価における制度が決まっていない施設も多くあります。昇進などのキャリアが上がることによる給料の増加はありますが、ほとんどの施設では役職につける人数が決まっています。
特に資格を有していないスタッフはなかなかキャリアアップすることができず、職場によっては役職に就くことができないこともあります。
なかなかキャリアアップができないことは将来への不安に繋がってしまい、転職を考える理由の一つとなってしまいます。

介護士が離職する本当の理由とは?

介護士の離職理由と聞くと「賃金の低さ」「肉体労働で腰を痛める」などの理由が良く聞かれます。これらを否定するわけではないですが、まずは正確なデータをもとに離職理由を探っていきましょう。

介護士離職は、報酬が原因とは言い切れない


介護労働安定センターが行った調査によると、離職理由のトップ5は以下の通りでした。

  1. 結婚・妊娠・出産・育児のため(26.0%)
  2. 職場の人間関係に問題があったため(16.3%)
  3. 自分の将来の見込みが立たなかったため(15.6%)
  4. 収入が少なかったため(12.3%)
  5. 他に良い仕事・職場があったため(11.5%)

つまり、巷で言われているような待遇の悪さが原因で離職しているという原因よりは、結婚や出産を契機としたライフスタイルの変化と職場の人間関係が本当の原因という結果です。

このままデータを受け取ると、ライフスタイルの変化は仕方がないし、職場の人間関係を良くするように風通しの良い組織を作ろうという結論に落ち着きそうです。果たしてそれは正しいのでしょうか?

介護士離職の本当の原因は「高い業務負荷」

離職原因を探る際のポイントは、理由の深堀りです。
例えば、今回の「ライフスタイルの変化」は深堀すると何が見えてくるでしょうか。実際に介護士の声を聞くと

  • 子育てをしながら夜勤をこなすことが難しいので離職した
  • 肉体的疲労が大きく、家事との両立が無理だった
  • 業務が多く殺伐としていたため、人間関係も悪化していた

といった、アンケート結果には表れていない事柄を知ることができました。

これらを組み合わせて考えていくと、本当の離職原因は「業務がつらい」というものであることが分かります。業務のつらさがあるので、ライフスタイルの変化を機に離職しようという決断になることや、人間関係がうまく醸成されないことは容易に想像できます。

ここまで突き詰めて考えると、福祉施設・介護施設の離職率を抑える最適な方法は業務効率化であるといえるのではないでしょうか。

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特に夜間訪室業務はストレスの元

さらに業務効率化を図るべき箇所を検討していくと、「夜間訪室業務」がキーになりそうです。
介護士のつぶやきを見ていくと、

  • 深夜の業務は生活リズムが崩れる
  • 見落としがあると大問題になってしまう
  • 子育てや結婚生活との両立ができない

といった声も聞かれ、夜間訪室業務や夜勤が大きなストレスになっていることが分かります。

つまり、業務の中でも特に強いストレスになっている夜間訪室業務の改善こそが、離職率改善への効果が高いように見えます。

夜間訪室業務効率化の施策3選

夜間訪室業務の改善するための方向性は、複数存在します。
それぞれの方向性ごとに施策をご紹介していきます。

業務自体の削減

根本解決を目指すのであれば、夜間訪室業務自体を削減する方法をとる必要があります。その方法としてお勧めしたいのが「見守りサービスの導入」です。

見守りサービスの導入により、遠隔で入所者様の状況が把握できたり、異常があるときだけ警告が表示されれば、定期的な巡回業務は必要なくなります。具体的には、ベッドにセンサーを設置し脈拍をモニタリングすることができ、室温や室内の人の動きを検知出来れば、人が見て回るよりも確実に部屋の中での異常を把握することができるはずです。

ご興味ある際は、こういった見守りサービスを提供する会社は複数存在しますので、まずは複数社へ見積もりを依頼しコスト感を把握するのが良いでしょう。

担当者の適正化

業務自体の削減が難しい場合は、業務を行うスタッフを調整することで、施設全体としての業務効率化を進めることができるかもしれません。「人事制度の見直し」はその方法として効果的で、夜勤有無で適応する人事制度を別に設けることにより、離職防止と夜勤の偏りによる不公平感解消を両立することができます。

例えば、職員の報酬体系を「夜勤ありコース」と「夜勤なしコース」に2分します。
夜勤なしコースでは、夜勤や残業が原則なく、育児や子育てとの両立が可能な就業を保証します。一方で、そのような働き方では責任を以って管理監督する業務は難しいため、管理職に向けて段階的に昇進することは前提としないこととします。
夜勤ありコースでは、シフトで夜勤が発生したり、必要に応じて残業が発生こととします。一方で、将来的な管理者層として育成することを前提とし、報酬にも自ずと差が出ます。

こうした人事制度の分割によってライフスタイルの変化による離職を防ぐ措置は多くの業界でとられており、今後介護業界でも広がることが予測されます。

心理的負荷の軽減

業務自体の削減が難しく、担当者の適正化も難しい場合には、せめて心理的負荷を減少させるような施策をとることができます。ここでご紹介したいのが業務監査システムの導入です。
見落として大問題になったらどうしようという不安は、チェック項目の明文化(ここまでやればよいという具体的な基準)と、しっかりチェックしたことを証明できる仕組み作りで軽減することができます。

例えば、業務監査ツール上でチェック項目として夜間訪室業務で見るべき項目を明文化し、夜間訪室業務の際にはチェックリストを手に携えて巡回します。そして、チェック完了時にシステムへその証跡を残すことで、万が一の際も事後的に自身は業務を適正に行っていたと検証可能な状況を作ります。

ICTを用いた業務効率化で職員の負担を軽減


ICTを用いると業務を効率化し、職員の負担を軽減することが可能です。ここで、ICTを活用した業務効率化の結果について例を上げながら説明します。
 

業務効率化の結果一例

①見守りセンサーでの事例

見守りセンサーをして、ベットセンサーを導入することで起き上がる直前に通知が来るため、転倒事故の防止やベットの上での姿勢を確認することができます。
このような見守りセンサーに加え、通話ができるナースコールを利用することで、緊急を要するナースコールなのか、後回しにできるものかの判断が訪室しなくとも分かるようになり、業務の優先順位をつける際の役に立っています。
他にも、見守りセンサーでは居室内の室温を測ることができ、室内での動作の確認と合わせることで熱中症の予防や昼夜逆転などの行動を確認することが出来るため、認知症に対する早期からの対応が可能です。
 

②インカム導入での事例

インカムを導入したことによって、スマートフォンを見る手間がなくなったり、おむつ介助中などの手が離せない状況でも他の介護職にヘルプをお願いすることができるようになりました。
 

③ポータブルエコーの導入事例

ポータブルエコーを使用し、膀胱内の尿の量を計測して排泄の時間を予測することで、利用者に適切な時間に排泄を促すことができました。尿が膀胱内に溜まりすぎてしまうと尿路感染症を起こしてしまうことがあるため、その予防の対策に繋がっています。
 

④LIFEの導入事例

利用者様の情報を記録することで自社の施設だけでなく、他社の同じサービス区分の利用者との比較ができるようになりました。また、ケアに対するレポートが見れるようになり、介護の質向上や利用者様に必要な介護がより行いやすくなりました。
さらにLIFEに対応した有料のサービスがあるため、記録の管理は別で行うなど柔軟に環境の構築を行なっています。

弊社での業務効率化の結果

以上でご紹介した内容と、弊社での業務効率化の実施内容を資料にまとめて配布しております。
「夜間訪室業務の効率化で離職率を改善する方法」のダウンロードはこちらから。

まとめ

本記事では福祉施設・介護施設での離職の原因から離職を減らすための対策、ICTの導入による業務負担の軽減方法と具体的なICTの導入事例について解説しました。
介護職は心身ともに負担がかかりやすく、適切な業務管理を行えないと離職者が増えてしまう職場です。しかし、課題に対して対策をきっちりと行うことで離職は減らすことができます。
本記事が皆様が介護施設の運営において、離職の対策やICTの導入を行う際の参考になれば幸いです。

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